出産時の事務手続き
前回は産休と育休の違いについてご説明しましたが、事務を担当する方にとってはこれだけでは十分ではありません。
産休と育休は手続きが全く違うのです。
今回は、産前産後休業期間についての事務手続きです。
常に育休の従業員がいるという事業所では、当たり前のことかもしれませんが
中小の事業所であれば、めったに行うことのない手続きもありますから注意が必要です。
1-1.産前産後休業時の事務手続き
1-1.産前産後休業時の事務手続き
まずは、産前産後休業時の手続きです。
今回は全国健康保険協会による健康保険に加入している事業所を例に説明します。
健康保険に加入している本人または被扶養者となっている配偶者の方が出産すると出産育児一時金が支給されることになっています。
金額は現在42万円です。
以前は、出産費用を自費で支払いその後に出産育児一時金の請求を行っていましたが、これだと事務手続きが面倒な上に一度まとまったお金を用意しなければならないために、出産育児一時金の内払制度というのが現在は行われています。
それは、簡単に言うとこういうことです。
病院で出産をしました。自然分娩で出産をしてその費用は50万円だったとします。
この場合に、出産育児一時金の内払制度を利用すると出産した本人は42万円を差し引いた残りの8万円のみを病院に支払えばよいのです。
病院では必要な手続きのために申請できるように証明書を準備してくれます。
こうして、ほとんど手間をかけずに出産一時金の申請が出来てしまします。
ここでは、出産費用が42万円を超える場合の流れを説明しましたが、42万円を超えない出産も考えられます。
帝王切開などでの出産では、出産に健康保険が適用され結果的に自己負担する費用が少なくなることもあります。
例えば自己負担が38万円だった場合は、どうなるでしょうか?
この場合は、42万円に満たない残りの4万円を口座振り込みで支給してもらうことが出来ます。
出産費用は掛からないで出産をすることが出来ます。
個室料金や食事に係る費用はかかります。
どちらの場合も、同じ申請書で行うことができるので、「出産育児一時金内払金支払依頼書・差額申請書」 という書類を作成します。
”全国健康保険協会のページから
続いて、出産手当金についてです。
1-2.出産手当金の手続き
出産手当金は、出産のために産前・産後休暇をとりその間、給与が支払われない場合にその分の給与保障として支給される制度です。
金額は、その方の所得に応じて変わりますが、標準報酬日額の3分の2です。
だいたい、通常もらっている給与の67%が支給されます。
この場合は、出産手当金の支給申請を行う必要があります。
産前産後休業の期間は出産してからでないと正確な期間が決まりませんし、給与が支払われなかった場合に支給される制度のため
産後休業が終了してからの支給申請になります。
ということで、産後休業が終了したら出産手当金の支給申請をします。
この手続きは病院が手伝ってくれるということもありませんから会社で行う必要があります。
それから、産前産後休業期間の保険料についての免除の手続が必要です。
以前は、この期間は健康保険および厚生年金保険の保険料が取られていましたが、今は本人負担分および会社負担分について保険料が免除となります。
しかし、自動的に免除となるのではなくこれも免除申請が必要です。
正しい手続きは次のようになります。
まず、出産予定の従業員が産前休業を開始したら、免除の申請を行います。
申請書は、「産前産後休業取得者申出書」というものです。
ここで出産予定日を基準とした産前産後休業の免除申請を行っておきます。
ただし、実際の出産が出産予定日を前後してしますと、変更届を出産後に提出しなければなりません。
このあたりが少しややこしいところではあります。
実際の出産日と出産予定日が同じであれば、1回の申出書で済みます。
この届出が遅れてしまい出産後になってしまった場合は、1回の手続きで済んでしまうことになります。
この場合は、保険料を一時的に会社が立て替えることとなってしまいますので注意が必要です。
そして、この申出書は日本年金機構に提出する書類となっています。
今は、各事務センターが各地に設置されています。
健康保険関係の提出先については、
基本は、日本年金機構(事務センター)
例外として、給付関係(お金をもらおうとするもの)と 限度額適用認定書は全国健康保険協会(協会けんぽ)と覚えると理解しやすいです。
”日本年金機構のページから
産前産後の手続きについて理解できたでしょうか?
今回は、育児休業の手続きについては説明できませんでしたので次回ご説明します。