Pocket

就業規則の作り方【ステップ3】

本のイメージ

さて、今回から実際の就業規則作成に移っていきます。
非常に大事なところなので、時間をかけて行ってみてください。
まずは、基本となる考え方を定めなければなりません。
皆様が作成している就業規則は、ひな型ではない、完全にオリジナルの就業規則です。
もちろん法律的な要素は必要ですが、経営者が自らの思いを形にしたものであるから価値があるのです。

基本方針を決める

突然ですが、こんなときどうしますか?

入社して3ヵ月の新入社員がいます。
仕事は繁忙期で先輩社員が遅くまで仕事をしています。
そんな中、新入社員は、自分にやれることもなく、定時になったら上がってよいと言われているため、帰っていきます。
こんな時、あなたならこの新入社員にどう対応しますか?

A 残業代を払って、残業させる

B 残業代を支払わず、残業させる

C そのまま帰らせる

この場合、
「どうせ、新入社員に残って残業させても思うような成果は得られないし、残業代を支払わなければ、法律に違反してトラブルにもなりかねないな」

などと考え、Cのそのまま帰らせる と答える方も多いのではないでしょうか?

確かに、残業が増えれば健康を害してしまうかもしれないですし、残業代を支払えば、もっと仕事のできる先輩よりも給与が上回って、逆転現象が起きてしまうかもしれません。
そうなったら、これまで頑張って時間内に仕事を終わらせようと考えていた人たちは、やる気を失ってしまうかもしれません。

それでは、こう聞いたらどうでしょうか?

この新入社員は、自分の息子(娘)です。
前の質問と同じような状況で、まだ入社3ヵ月で仕事もできないので、彼(彼女)にできることはあまり多くありません。
そんな時、どのように対応しますか?

A 残業代を払って、残業させる

B 残業代を支払わず、残業させる

C そのまま帰らせる

先ほどは、選ばなかったBを選択する方が多いのではないでしょうか?

では、この違いは何ですか?

それは、自分の子には給料よりも今は成長してほしいと願っているからではないでしょうか?

今、定時で帰ってしまっては、いつになっても仕事を覚えて先輩と同じあるいはそれ以上の仕事をすることはできず、将来苦労するに違いない
だから、今は無理をさせてでも仕事を覚えることの方が重要だと思うことでしょう。

自分の子供には言えることが、それ以外の従業員に対しては選択できないということは、経営者としては、正解でも、
人としては不誠実ではないでしょうか?

経営者が人として正しいことをやろうとする思いを込めたルール作りが就業規則を作る上での一つの柱です。

「人として正しいことを行うためのルール」であるべきです。

そんなことを言ったって、それでは法律違反をしてよいということでしょうか?
というご指摘を受けるかもしれません。

法律違反のないように、ルールを工夫することは、私たち社労士の役目だと考えています。

もう一つ、重要なことをつけ加えておきます。

例えば、20歳で入社した従業員がいたとして、彼(彼女)の20歳の時の給与月額は20万円だったといたします。
彼(彼女)が40歳にまで継続して勤務していた時に、同じ仕事しかできなかったとしたらどうしますか?

20年続けて勤務したのだから、毎年少しづつ昇給して40万円になっているでしょうか?
それとも、同じ仕事しかできないのだから20万円のままでしょうか?

20歳の時と40歳に時では、状況は異なってきます。
結婚して、子供がいるかもしれません。家族を養い、教育にかかる費用も必要です。

でも、同じ仕事しかできないのでは、給与を増額することは到底できないと思います。

そうすると、入社した従業員に倍の給与を払うとすれば倍以上の働きができる人材になってもらわなくては、会社は立ち行かなくなってしまいます。

それでは、従業員にもっと多くの給与を支払うためにはどうすればよいのでしょうか?

それは、従業員を成長させる仕組みを作ることです。

成長して、もっと多くの仕事・もっと質の高い仕事ができるようになれば、年齢相応の給与を支払うことができるようになるのではないでしょうか?

就業規則を作成する上での基本方針が何なのか明確にするかしないかで、そこで働く従業員の意識が全く変わります。

「人を成長させるためのルール」

これが、2つ目の柱です。

この2つの柱を考えたうえで、基本方針の作成を行ってください。