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求人票に書いてある条件と違っていたら違法?

皆さんは働いていて
「こんなはずじゃなかった」
「こんなことは聞いていない」と思ったことはないでしょうか?

労働に関する問題はたくさんありますが、そんな時どのように対応したらよいでしょうか?
今回は、事業所の立場になって求人票と労働条件についてまとめています。

1-1.インターネットの求人票に書いてあった条件と違う?これって違法じゃないの?
1-2.福祉事業者A苑事件(京都地方裁判所 H29.3.30)
1-3.自社の求人票の条件を今一度チェックしてみる

1-1.インターネットの求人票に書いてあった条件と違う?これって違法じゃないの?

従業員の一人が「私は、インターネットの求人をみて応募したのですが、実際に入ってみたら条件が違っていた。こんなはずじゃなかったのに、どうしてくれるんですか?」
と言われたらどうしますか。

「これが、ここの事業所の規定で決まっている条件だから、ほら就業規則にもそう書いてあるでしょ?」といいますか?
「求人票にはそう書いてあったけど、あなたは未経験者だからスタートはここからです。1年たてばこれくらいにはなりますから」といますか?
それとも
「入職の時に個別に契約書を交わしましたよね。そのときに給与などのこともよく説明して、書面も交付しましたよね。」といいますか?

このような時、どうしたらよいのでしょうか?
前記のように、言ってしまったら、労働紛争になるかもしれません。
労働紛争が発展したら、労働基準監督署の調査を受けることになるかもしれません。
さらには、調停や裁判に発展するかもしれません。

そうなると、費用も時間もかかってしまいます。精神的な負担もあります。
裁判になって、負ければ社会的な信用が下がり、入職希望者がいなくなってしまうかもしれません。

とはいっても、労働に関してすべて完璧な制度を整えることは難しいと思います。
実際に、全国のいたるところで労働紛争は発生しています。
そして、労働の形はどんどん変化しており、数年前まではよかったことが、今では通用しなくなっているかもしれません。

そこで、今回は最近行われた裁判の事例から身近な労働問題について解説をしていこうと思います。
ということで、今日のテーマである求人票の労働条件と違っていたら、どうしたらよいのかです。

1-2.福祉事業者A苑事件(京都地方裁判所 H29.3.30)

この事例は実際に「福祉事業者A苑事件」ということで、京都地方裁判所で争われています。
判例は(京都地判平29.3.30労判1164号44頁)です。
こうして過去の判例は、残っていき後々の裁判にも影響を与えていくんですね。
この判例を調べれば、このようなとき裁判所はどう判断したかわかります。
そうすれば、不要な裁判をせずに済みますね。

判例に戻ります。
この判例は、ある人(X)が求人票を見てA苑の採用試験を受けます。面接の結果、採用が決まり採用通知を受け取りました。
就労を開始した後に労働条件通知書を交付され署名捺印をしました。

この求人票には労働契約期間の定めがないと書かれており、労働条件通知書には契約期間の定めがありました。

A苑は、契約書の通り、契約期間の終了をもって労働契約を終了させたところ、求人票には契約期間の定めがないとされていたため、Xは地位保全を主張して対立してしまったという内容です。

この裁判は、Xの主張が認められました。

裁判所は、「求人票記載の労働条件は、特別の合意をするなどの事情がない限り、雇用契約の内容となる」という回答を示しています。

つまり、求人票にある内容が雇用条件であるということです。

1-3.自社の求人票の条件を今一度チェックしてみる

しかし、こういったことは良くあるのではないでしょうか?
同業の事業で特別利益があるというわけでもないのに、他事業者の給与が高いように求人票に書かれているなど、本当にこんなにいい条件で雇ってもらえるのか?
ということが

今は、人材不足なのでどこもほかの事業所より良い条件を掲載しなければ応募してくれないと考えて、いろんな手当を含めて一番条件が高くなる人をあたかも

「これがうちの一般的な条件です」というようなところも見受けられます。
「はいってみたが、こんなはずじゃなかった」といって、間もなく退職となってしまうこともあるでしょう。

今回の裁判で、求人票はあくまでも予定で、実際に雇用契約を結ぶときに本当の条件を記載すればいいやという考えは否定されました。

絶対ダメと言ことではなく、変更するときはそれなりの手続き踏まなければならないということです。

求人票の内容と異なる内容で雇用契約を結ぶときは、求人者にきちんと求人票とはここが違っているときちんと説明したうえで、労働者の理解のもと労働条件通知書などに署名を求めるようにしておかなければなりません。

逆に言えば、労働者側から

「求人票に書いてあったからこれは無効じゃないですか?雇用契約の時にも説明を受けていません」

といわれてしまえば受け入れなければなりません。

多くの人に応募してきてほしいという気持ちはわかりますが、人を呼び集めるために不当に条件を上乗せするような求人はあってはなりません。
もっと他の方法で人を集める工夫はあります。
インターネットや自社のホームページ、ハローワークの求人票など実際の内容と異なる内容になっているところはないか今一度チェックしてみましょう。

ということで、最近の労働判例から身近な労働紛争の事例を取り上げました。
参考になる部分もあったのではないでしょうか?
最近の判例は、今の労働問題を知る良い材料となります。

皆様の事業所が、よりよい職場環境となる手助けともなりますと、幸いです。