Contents
茨城労働局が公表した監督指導結果について
社会保険労務士の瀧崎です。
今回は、監督指導結果の公表についてです。
労働基準監督署の行う監督指導にはいくつか種類があるのですが、毎年定期的に行われる定期監督の他に特定の業種や労働災害が発生した事業場を対象にした監督指導が行われることがあります。
今回は、平成31年4月から令和2年3月までに行われた「長時間労働が疑われる事業場」に対する監督指導結果が公表となりました。
この長時間労働が疑われる事業場に関しては、36協定で定めた限度時間が80時間を超えている等の場合や長時間労働を原因とする過労死等の労災の請求が行われた事業場を対象にしているとのことです。
早速、公表結果を見ていきます。
まずは、監督指導全体について下記、御覧ください。
監督指導結果のポイント
今回の監督指導は、長時間労働の疑いのある事業所を狙い撃ちしているため、当然、是正勧告等を受ける割合は高くなると思われますが、全体的には78.2%の事業場で何らかの労働基準法例の違反行為があったということです。
今回、監督署が見ていたポイントは以下の2つです。
・違法な長時間労働があったか否か
・健康障害防止の措置を講じているかどうか
法違反の状況
では、なんらかの法違反があったとして是正勧告書を交付された状況を見てみましょう。
全体としては、労働時間に関するものが49.1%で、最も多く、賃金不払い残業が1割弱、健康防止措置が15%強となっております。
労働時間に関しては、36協定違反が考えられます。
つまり、協定していた限度時間を超えて時間外労働が発生していた事業場です。
これに関しては、時間外が多い・少ないに関わらず労働組合又は労働者代表者と締結した労使協定の時間外の制限時間をオーバーしていたかどうかによります。
働き方改革関連法が施行されて以降は、限度時間にも制限がかかってきますので注意するポイントです。
労働時間規制についてよくわからない場合は、公表されている資料(リーフレット)や専門家にご相談下さい。
業種別の統計については、特に業種による違いは認められませんでした。
長時間労働は、全業種共通の課題とも言えそうです。
そんな中で、運輸交通業については全体の6%にとどまっていますが、労働時間規制の猶予が外れた場合にどのようにすればよいのかと言うのは、今後の課題と言えると思います。
建設業についても同様です。
事業場規模別・企業規模別の結果について
続いては、規模別の結果です。
結果は、下記のとおりです。
こうしてみていただくと、50人未満の事業場で80%を超えていることがわかります。
ですから「うちは、小さな会社(事業場)だから」というのは、まったく当てはまらないことになります。
労働基準監督署では、提出された36協定の限度時間が何時間か、提出されていない事業場はどこか、労働災害が発生した事業場はどこか把握した上で、規模に関わらず監督指導を行っているということが言えそうです。
健康障害防止に関する指導の結果について
続いては、長時間労働に直接関係する事項として、
「健康障害の防止措置を行っているかどうか」の確認を行っております。
こちらは、監督署が何を見ているのか分かりづらいポイントだと思いますので、どんなことを見て指導しているのか確認してみましょう。
指導事項としては、上記のようになっています。
それぞれの項目についてのポイントをまとめてみます。
指導事項 | ポイント |
---|---|
面接指導等の実施 | 1か月80時間を超える時間外・休日労働を行っている労働者に、面接指導等の措置を講じていますか? |
長時間労働による健康障害防止対策に関する調査審議の実施 | 50人以上の事業上であれば、衛生委員会を設けて話し合っていますか それ以下の事業場は、労働者の意見を聞く機会を設けていますか? |
月45時間以内への削減 | 1か月あたりの時間外を45時間以内に削減するよう努め、そのための具体的な方針を検討、講じていますか? |
月80時間以内への削減 | 働き方改革関連法改正後は、80時間というのが1つの基準になるので、最大でも80時間以内とすることが求められてきます。 |
面接指導等が実施できる仕組みの整備等 | 労働者が面接指導を申出る仕組みができていますか?例えば、80時間を超える場合に申出書を提出するなど |
ストレスチェック制度を含メンタルむヘルス対策に関する調査審議の実施 | ストレスチェックの報告およびストレスチェック結果を受けての職場改善の検討などができているか? |
労働時間の把握の結果について
ここでは、長時間労働があるか調査するに当たり、そもそも労働時間の把握が適正に行われているかどうかの確認を行っています。
出勤簿・賃金台帳を見ても問題がない場合でもそもそもその根拠となる数字に問題があっては、仕方ないですよね。
ということで、どのように労働時間を把握に関してどのような項目で指導が行われているかというのが、下記になります。
結果を見ていくと、ガイドラインという言葉が出てきております。
これは、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインなるものが公表されており、この内容に基づいて指導が行われているということです。
ガイドライン4(1)というのは、始業・終業時刻の確認および記録に関する内容です。
その他では、自己申告制による場合についての指導が行われていることがわかります。
タイムカード、勤怠システムなどによらず、労働者の自己申告に任せて労働時間を管理している場合です。
結果を見ると、自己申告制について多くの項目を割いており、
「自己申告制による時間把握は、疑わしい」とも言えるのではないでしょうか?
働き方改革においては、労働時間の削減というのが重要ポイントとなります。
ですから、そのためにはまずリアルタイムで労働時間を把握する仕組みを構築することが重要と考えます。
こちらについては、ぜひ専門家に相談されることをおすすめします。
最後に労働時間把握のガイドラインにを一部載せておきます。
こちらにつきましては、当てはまる項目がある場合は、確認をしておいて下さい。
最後に
というわけで、今回は茨城労働局が公表している監督指導結果の公表についてまとめてみました。
監督行政がどのようなことに重きをおいて監督しているかということがわかったのではないでしょうか?
今後も、皆様の会社を守るための制度や注意点などを解説していければと思います。
役に立っとよという方は、「いいね」の評価お願いします。
無料相談をご希望の方は、記事の下にあるフォームからお申し込み下さい。