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2020年10月から始まる介護職員等特定処遇改善加算を解説

介護保険制度が始まったのは、西暦2000年なので、あと数年で20年を迎えることになります。
そこで、最近は介護業界全体の人手不足の影響から介護職員の処遇を改善して人手不足を解消するという動きが出ています。

処遇改善加算の歴史については、ここではお伝えしませんが、通常2年に1回行われる介護保険制度の改正で時代に合わせた改正を行っているわけですが、
処遇改善加算に至っては、その改正時期を待たず制度が変更されてきています。

今回も、4月からの変更ではなく10月から制度が改正されることとなりました。
これまでは、「介護職員処遇改善加算」という名称でしたが、

今回は、「介護職員等特定処遇改善加算」という名称となります。

ということで、これまでの処遇改善加算の歴史からすると、大きな変更が加えられましたので、ここで発表された資料を基にポイントを解説してみます。

介護職員等特定処遇改善加算に関する基本的考え方

下記の通り、内容が示されています。


今回の改正の目玉は、「勤続年数10年以上の介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行う」ということです。

また、これまでもたびたび意見が上がっていましたが、「介護職員以外の職種」についても、処遇改善を求めることとなります。

介護事業においては、介護職員ばかりでなく、看護師や准看護師、機能訓練指導員、生活相談員、ケアマネージャー、事務など多くの職種の人たちがそれぞれの役割を果たすことで成り立っていますので、この流れは歓迎すべきものだと思います。

そして、今回の介護職員等特定処遇改善加算の適用は、2019年10月1日となります。
届出のスケジュール等は、後ほど出てまいります。

 

職員の種類を3つに区分

今回の改正では、介護サービス事業所で勤務する職員を3つに分けてそれぞれに応じた、賃金上昇を行うこととなります。

3つの区分については、下記のとおりとなります。

 

① 経験・技能のある介護職員
介護福祉士の資格

所属する法人等における勤続年数10年以上の介護職員

※その他、他法人における経験や、業務や技能等を踏まえ、各事業所の裁量で設定する

② 他の介護職員
①の介護職員を除く介護職員
③ その他の職種
介護職員以外の職員

※ 看護師、准看護師、機能訓練指導員、ケアマネージャー、事務など

まずは、3つの区分について明確に分けることが必要です。
特に、①の経験・技能ありの介護職員については、最終的に各事業場の裁量で決めるということなので、何らかの基準が必要と思われます。

 

配分方法

続いては、特定処遇改善加算の配分方法です。

 

以下のルールに従って配分します。
ただし、このルールはそれぞれの区分全体について当てはまっていればよく、個々の職員については、当てはまらなくてもよいとのこと

 

ルール1
経験・技能のある介護職員のうち1人以上は、賃金改善見込み額を月額平均8万円以上、または440万円以上とする
ルール2
経験・技能のある介護職員の賃金改善見込額の平均は、他の介護職員の賃金改善見込み額の平均2倍以上にする
ルール3
他の介護職員の賃金改善見込額の平均は、その他の職種の賃金改善見込み額の平均2倍以上にする
ルール4
その他の職種の賃金改善見込額が440万円を上まわらないこと

※440万円を上回る場合には、その者は加算の対象とならない。

図示するとわかりやすいですね。

①の区分の8万円アップは、全体では難しいかもしれませんが、少なくとも1人は8万円以上の上昇が必要となります。

 

加算取得の要件

下の資料では、今回の加算の取得要件が記載されています。
ここは、重要なポイントなので、資料でも確認してみてください。

加算取得の4つの要件

ここからは、加算取得にあたっての要件を確認してみます。

これまでとの違いでいうと、キャリアパス要件がなくなりました。
キャリアパス要件は、年齢、勤続年数、資格、その他評価制度などによるキャリアパスに基づく賃金制度があることなどがありました。
これらは、要件から外されています。

代わりに加えられたのが、下記の2つです。

・介護福祉士の配置要件

・見える化要件

全ての要件は、以下のとおりです。

①介護福祉士の配置要件
サービス提供体制強化加算の最も上位の区分を算定していること

※以下のサービスについては、下記の加算を算定していること
訪問介護・・・特定事業所加算Ⅰ 又は Ⅱ
特定施設入居者生活介護・・・サービス提供体制強化加算Ⅰイ 又は 入居継続支援加算
介護老人福祉施設等・・・サービス提供体制強化加算Ⅰイ 又は 日常生活継続支援加算

②現行加算要件
現行加算 から Ⅲ までのいずれかを算定していること
③職場環境等要件
これまでの実施した処遇改善(賃金改善を除く)の内容を全ての職員に周知していること

※届出様式別表にでてくる「資質の向上」、「労働環境・処遇の改善」、「その他」の区分ごとにそれぞれ1以上の取り組みを行う

④見える化要件
今回の加算に基づく取組について、ホームページへの掲載等により公表していること

※具体的には、下記を活用または、自社のホームページに掲載
介護サービスの情報公表制度(今後公開となる模様)

 

特定加算の区分

特定加算の区分は2種類となります。

最高区分は、特定加算Ⅰで、この加算を取得するには、①~④すべての要件を満たす必要があります。

も一つの区分は、特定加算Ⅱで、この加算は、②~④の3つの要件を満たすことが必要です。

 

雇用保険制度による助成金「人材確保等支援助成金(介護・保育労働者雇用管理制度助成コース)」が活用可能

発表された資料にも、下記のように助成金活用の記載があります。

賃金制度を整備し、離職率の低下に取り組む事業主に対して助成されます。

今回の特定加算によって、確実に賃金が上昇することが予想されますので、助成金を活用した経営を考えることも必要なことと考えます。

助成金の内容は、厚生労働省のページで確認できます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000199292.html

簡単な内容はこんな感じです。

① まずは、⑴~⑸のいずれかの制度導入について計画を作成都道府県労働局の認定を受ける。

② その後、実施計画期間内に、上記の制度を導入・実施

③ 計画期間終了後1年間の離職率が、計画前1年間よりも一定の割合で下がっていれば、目標達成。

 

助成金の受給額は、57万円

生産性要件を満たした場合は、72万円 が受給可能。

 

助成金について、詳しく知りたい方 若しくは、弊社でのサポートを希望される場合は、お気軽にご相談ください。

初回の相談は、無料です。

 

特定処遇改善加算 サービス別の加算率

下記の表は、サービス種類ごとの加算率です。

人件費がかかるサービスは、高い割合となっています。

この分を、賃金で受け取れると思えばいいですが、介護サービスの利用者からも1割~3割負担してもらうこととなります。

訪問介護等は、突出して高くなっていますが、利用者負担についても考える必要がありそうです。

 

特定処遇改善計画書の書き方

ここからは、計画届の記入方法です。

以前とは異なる点が、多数ありますのでご確認をお願いします。

 

異なる点は、職員を3つに区分するのでそれぞれについて、加算前と加算後の賃金額を計算し、記載します。
マーカーでピンクにふちどりした箇所が変更箇所です。

2枚目は、「見えるか化要件」についての記載欄が追加されています。

基本的には、ホームページ(介護サービス情報公表システム)への記載となるのではないでしょうか。
ホームページの更新が容易に行える場合は自社ホームページでもよいかもしれません。

※2020年までは、この「見える化要件」については、算定要件とされていません。

 

特定処遇改善実績報告書の書き方

こちらにつきましては、計画年度が終了し、処遇改善を行ったあとの提出となります。
変更点は、計画書と同様です。

 

Q&Aについて

具体的に考えられる質問について、回答が掲載されていますので、確認してみます。

勤続10年以上の介護福祉士がいない場合

新設された事業所などの場合は、経験のある職員がいないケースも考えられます。

 

回答にある通り、要件を満たせば、取得可能となります。

経験・技能のある介護職員かどうか事業所の裁量で設定できるとあるが、どのようにすればよいか

明確に決められていないので、迷うところではあります。

「他法人での経験も含めて判断する」
「能力評価や東急システムを活用する」

など示されていますが、最終的には事業所の判断で設定可能とのこと

なお、設定は自由であるが、その場合に経験・技能あり区分の職員を増やすと、処遇改善の配分を考える上では事業所としては厳しくなってくる。
働く職員としては、処遇改善が期待できるということになる。

※個々の職員については、配分ルールに当てはまらなくても問題はない

 

経験・技能のある介護職員に該当する介護職員がいない場合、賃金改善はどうすればいいのか

配分ルールがあり、最上位の区分には、月額平均8万円以上という基準があったが、いない場合は無視してもよいかとの問題

 

基本的には、最上位の区分に該当する職員を設定して、月額8万円の賃金改善を行うこととなる。

 

現行の処遇改善加算による改善額も含めて考えてよいのか

処遇改善加算の制度が始まったときからいる職員は、既に賃金が上昇しているがその分も含めて考えてよいのかとの問題です。

 

 

「現行の介護職員処遇改善加算による賃金改善分とは分けて判断する」という回答です。

「これまでも上げてきたのに・・・」というため息が聞こえてきそうですが、
特定処遇改善加算の見込額を元に、どのような配分であれば可能かシミュレーションを行うようになると思います。

最後に

いかがだったでしょうか。

今回は、2019年10月開始の介護職員等特定処遇改善加算を解説してみました。
計画届の提出が、8月末ということであまり期間がないので早速、取り掛かっていただくことを期待しています。

特定処遇改善加算について相談・サポートを希望される方は、フォームを作りましたのでフォームよりお申し込みください。

今回示された助成金についても相談可能です。

対応地域は、茨城県およびその隣接県となります。(相談可能な場合もありますので、お気軽にお問い合わせください。)

初回の相談は無料です。