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処遇改善手当の計画届は作成済みですか?

介護事業者に適用される処遇改善加算の届出時期が迫ってまいりました。
この届出は、年に1回すればいいのですが、何回も制度が変わり最近は、制度改正時期よりも前倒しで行われたり、急な対応が求められ理解するのが困難になってきました。
加算を取得する要件も増加し、加算1~5まで5段階が設定されています。また、行っている事業の種類により加算率が変わってくるなど非常にわかりずらくなっています。

そこで、この処遇改善加算について制度の歴史や内容、手続きまでわかりやすく理解できるよう解説をしていきたいと思います。

1-1.現在の制度を確認
1-2.新たに加えられたキャリアパス要件Ⅲを確認

1-1.現在の制度を確認

処遇改善手当の区分は現在5つです。区分(Ⅰ)から区分(Ⅴ)まであります。平成29年4月から区分(Ⅰ)加えられました。
区分Ⅰは一番要件が厳しく、加算率が高く設定されています。
平成28年までの区分Ⅰは現在の区分Ⅱとなり、Ⅱ・Ⅲ・ⅣについてもそれぞれⅢ・Ⅳ・Ⅴに繰り下がりました。

区分については、厚生労働省から出ているパンフレット「介護職員処遇改善加算」のご案内にわかりやすく図示してありますので、参考にしてみてください。

平成29年に新しくなったところは、これまでキャリアパス要件と職場環境等要件の2つがあり、キャリアパス要件には要件Ⅰと要件Ⅱがありましたが、さらに要件Ⅲが加わったところです。

このキャリパス要件Ⅰ~Ⅲおよび職場環境等要件をすべて満たすことによって処遇改善加算Ⅰが取得できるというわけです。

1-2.新たに加わったキャリアパス要件Ⅲを確認

この度の改正により、キャリアパス要件Ⅲが新たに追加となりました。
このキャリアパス要件Ⅲを満たす要件を見ていきましょう。
要件は2つあります。1つ目は、経験・資格・一定の基準に基づき昇給させる仕組みを設けることです。
上記に挙げられている3つの基準のうちのいずれかでいいので昇給させる制度を備えているかというところです。

経験とは勤続年数や経験年数です。この年数によって昇給する基準が定められていれば大丈夫です。
毎年の定期昇給はどうでしょうか。経験や勤続年数による給与表などが用意されていれば当てはまるでしょう。

資格とは、たとえば社内で認定制度を設けているような場合です。社内の資格を取得すれば昇給するといった制度があれば要件を満たせます。キャリアパス制度の中に資格を取得すれば昇給するような基準が設定されていることです。
では、介護福祉士を取得した場合に資格手当が支給される場合は当てはまるでしょうか?
これだけだと難しそうです。資格手当の支給は単に資格を持っているかどうかで支給されるもので、キャリアアップの仕組みとして制度化されているとは言えないからです。
いろいろな研修や資格を設定し、キャリアアップする仕組みを制度化し、昇給させる仕組みをつくっていれば当てはまりそうです。

一定の基準に基づき昇給させる制度とは、会社独自のキャリアパス制度やキャリア段位制度に基づく人事制度を構築しているかというところです。キャリアパス制度は、構築するまでは時間も労力もかかるので社労士などのプロに依頼することも考えるではないでしょうか。厚生労働省が出している「介護プロフェッショナルキャリア段位制度」は、介護労働者のためのキャリアパス制度なので、取り入れやすいのではないかと思います。

上記に挙げた基準のいずれかに加え、この昇給の基準を就業規則等に定め、すべての介護職員に周知している事が必要となります。

昇給は有るけど、経営者が感覚で決めているなどという場合は、就業規則などに明確に定めておく必要があります。

以上が新たに追加されたキャリアパス要件Ⅲの内容となります。

キャリアパスの仕組みが形になっていない事業所は、仕組みを整備する必要があるでしょう。

処遇改善加算で得られた報酬は、すべて介護職員への賃金改善等に使われる必要があります。今回の変更により区分Ⅰを取得した場合、介護職員1人当たり平均して1万円相当の賃金改善となります。
賃金の改善は、深刻な人手不足の介護事業にとっては、重要です。

介護人材の確保のためにも処遇改善Ⅰの取得は必須となるでしょう。
以上、今回は平成29年4月に改正された部分の解説をいたしました。