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仮眠時間は労働時間に含まれるのか

労働に関して起こる問題に対して定めている法律に労働基準法がありますが、労働基準法は基本的に労働者が有利にできていますから、事業者は労働者に不利な条件とならないよう気を付ける必要があるのです。

夜勤のある事業所では、夜間の業務はどのように行われているでしょうか?
今回は、夜間帯の仮眠時間について労働法上はどのように取り扱われるのか見ていきます。

1-1.イオンディライトセキュリティ事件(千葉地判平29.5.17 労判1161号5頁)
1-2.自由利用の原則
1-3.待機時間について

1-1.イオンディライトセキュリティ事件(千葉地判平29.5.17 労判1161号5頁)

千葉地判平29.5.17労判1161号5頁となります。

概要はこのようになります。
当事者Xは、警備業を営むY社に雇用され、警備の仕事に就いていました。
この仕事は交代勤務であり、夜間は仮眠を挟んでの勤務でした。

しかし、Xはこの仮眠時間は労働時間であると主張して争われた裁判になります。

24時間開いている事業所では、交代勤務が行われていますので、このようなこともあり得るのではないでしょうか?
夜勤が10時間とかそれ以上の時間が設定されていて、途中に仮眠時間を設けているというケースです。

この場合の仮眠時間もまた労働時間とされるでしょうか?

今回の裁判の結果は、このようになりました。

「当該時間に労働者が労働から離れることを保証されていて初めて、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる」

どういうことかというと、仮眠時間が完全に自由な休憩時間となっていない限りは、労働時間としなければならないということでした。

今回は、警備業ということで何か異常事態があった場合に連絡がくるという事情がありました。
社内のマニュアルにも緊急事態の際には、仮眠中の警備員に連絡することが記載されていました。
連絡が来れば、その警備員は対応することが求められていたわけです。

1-2.自由利用の原則

あまりよく知られてはいませんが、休憩時間には自由利用の原則があります。
休憩時間は何をしても良いことになっています。
そして、休憩時間にも何かあったら対応するようにという指示を出すことは休憩時間の自由利用に反します。
休憩時間に外出することはどうなのか?
漫画やゲームをしてもよいのか?
など休憩時間は仕事の一部なので会社の指示に従わなければならないと思いがちですが、これは違います。

とは言っても、休憩中に従業員が勝手に外に出て行っては会社が困ってしまうときもありますよね。

そんな時は、従業員に休憩なので「外に行ってきます」と報告させることは法律上も許されることです。

「休憩時間は自由だから何をしててもいいけど、外に出るときは誰かに一言告げていってくださいね。」ということは問題ありません。

今回は、仮眠時間が労働時間に当たるかということで判例が出ましたが、電話待機の時間や留守番の時間など会社によって拘束されている状態となれば、労働時間ということになりますね。

1-3.待機時間について

ここで電話待機という言葉が出てきましたが、ここでいう電話待機は会社に残って電話待機をしている時間のことです。
自宅での電話待機については、すこし事情が異なってきます。

勤務時間外の電話待機については、休憩時間とは異なり、労働時間とはみなされません

ただし、緊急呼び出しとなり出社した場合は出社して勤務した時間はもちろん労働時間です。
また、緊急出動によって自宅から会社までの時間についても労働時間とはみなされません。

今回の判例について事業者はどのようにしたら、良かったのでしょうか?
それは、仮眠時間の間は起こさないような体制を整えることです。
仮眠者がいなくても対応できるような体制を整えることが必要です。

これが、東北大震災のような緊急事態の時は話が違いますので、このような天変地異などの緊急事態の際は全員で対応することが必要だと思います。
この辺の判断は難しいので、緊急事態とは何を指すのかはある程度基準を示してあげてもよいでしょう。

ということで、今回は最近の判例から労働時間についての微妙な問題を取り上げました。
もう一度言いますが、労働基準法は基本的には労働者有利にできていますので、規則を作るときには注意してください。
皆様の事業所様にも「これでいいのかな??」というようなところはありませんか?

日ごろから問題が起こらないよう、就業規則や社内ルールの整備を行ってくださいね。