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就業規則を作成する前に知っておく知識
今回から何回かに分けて就業規則を作成する手順について説明していきたいと思います。
就業規則を作成する目的は、「従業員が働きやすい環境を整備する」ことです。
これまでは、会社を守るためのという目的に重点が置かれていました。
しかし、今は採用した従業員が成長し、働き続けられる環境を作ることが重要と考えます。
そこで数回に分けて就業規則の作成の手順について書いていきます。
1-1.就業規則のルール
1-2.就業規則は周知を行って初めて効力が発生する
1-3.周知の方法
1-4.就業規則に書く内容
1-5.絶対的記載事項
1-6.相対的記載事項
1-7.就業規則の変更には注意が必要
1-8.過半数代表者の選任方法
1-1.就業規則のルール
まず、就業規則のルールは次のようになっています。
確認してみてください。
1.就業規則の作成義務は常時10人以上の労働者を使用する使用者にあります。
これを定め管轄する労働基準監督署に届け出を行わなければなりません。
2.就業規則の届け出は、会社単位ではありません。必ず事業所単位で作成し、届け出する必要があります。
3.就業規則を届け出る際は、従業員の過半数を代表する者の意見書を添付する必要があります。
以上が就業規則を作成する上でのルールとなります。
「常時10人以上」、「事業所単位」、「労基署への届出」、「過半数を代表する者との意見書」というキーワードが出てきたと思います。
まずは、このことを覚えておいてもらいたいと思います。
1-2.就業規則は周知を行って初めて効力が発生する
続いては、就業規則の効力の発生についてです。
就業規則は、作成して届け出るだけでは、実際には効力が発生しません。
従業員の皆さんに周知を行って初めて効力が発生するため、必ず従業員への周知を行うようにしてください。
逆説的に言うと、就業規則の届け出を行っていなくても従業員への周知を行った時点で効力が発生することになります。
だからといって、届け出は遅くなってもいいということではありませんので、就業規則を作成したり、変更をしたときは速やかに届け出を行うようにしてください。
1-3.周知の方法
従業員への周知の方法については、事業所によって適切な方法を選択するのが良いのですが、主に以下のような方法が考えられます。
1.各従業員に紙の就業規則を配布する
2.会社のパソコン等でいつでも見ることができるように、事業場内のネットワークなどにファイルを置いておく
3.会社内の一定の場所においておく
以上のような方法が考えられます。
従業員がほどんど事務所で仕事をしないというような事業場も考えられることから、事務所においておけばそれで周知がなされたということにはなりませんので、ご注意ください。
1-4.就業規則に書く内容
就業規則は、決まった形があるわけではありませんが、次の2つの事項があります。
・絶対的記載事項
・相対的記載事項
1-5.絶対的記載事項
その名の通り、絶対に就業規則に記載しなければならない事項です。
これらが含まれていない就業規則は認められませんので、以下の内容については必ず記載をしてください。
1 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇ならびに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合の就業転換に関する事項
2 賃金(臨時の賃金等を除く)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締め切り及び支払い時期並びに昇給に関する事項
3 退職(解雇事由含む)に関する事項(退職手当を除く)
休日と休暇については使い分けをしています。
休日というのはもともとの休日など労働義務のない日を言います。
それに対し、休暇というのはもともと労働義務があった日を休みにする場合に休暇となります。
労働基準法では、原則として週に少なくとも1日は休日を設けることとなっていますから、これは休日です。
年次有給休暇は、もともと労働義務があった日に休暇を取得することによって休みとなるので、休暇となります。
これは、特別休暇なども同じです。
ですから、年次有給休暇や特別休暇は休日とは言いません。
ということで、休日はもちろん会社独自の休暇を設定する場合にも就業規則に記載する必要があります。
1-6.相対的記載事項
絶対的記載事項に対し、相対的記載事項は、決まりがあれば記載してくださいという事項です。
書いても書かなくてもいいですよということではありません。
決まりがなければ書かなくてもよいが、決まりがあれば書かなければならない事項です。
相対的記載事項は以下のとおりとなります。
1 退職手当に関する事項(適用者の範囲、退職手当の決定、計算、支払の方法・時期)
2 賞与等・最低賃金額について定める場合には、これに関する事項
3 食費・作業用品等を負担させる場合には、これに関する事項
4 安全・衛生に関する事項について定める場合には、これに関する事項
5 職業訓練に関する事項について定める場合には、これに関する事項
6 災害補償・業務外の傷病扶助について定める場合には、これに関する事項
7 表彰・制裁について定める場合には、これに関する事項
8 上記のほか、当該事業場の全労働者に適用される事項について定める場合には、これに関する事項
上記については、労働基準法で定められている義務ではないということになります。
就業規則を作成するステップについては、後述いたしますのでここでは個々の内容については省略します。
1-7.就業規則の変更には注意が必要
就業規則は、1度作成したらおしまいではなく、必要に応じてつくりかえたり、追加しなければならない事項も出てきます。
個人情報の取り扱いや、SNSなどでの発信、ハラスメントなど一昔前であれば、全く問題にならなかったことも時代によって変化していきます。
経営者が心を込めて、一つ一つ時間をかけて考えた就業規則でも同じです。
しかし、これには1つ注意が必要です。
それは、就業規則で定めたことは、従業員にとっての権利となりますので、一方的に従業員に不利益となるような変更は許されないという点です。
従業員によって不利益となる要素が含まれている場合は、時間をかけて従業員と話し合うことも必要です。
そこで、出てくるのが就業規則作成時にも必要だった従業員の過半数を代表する者の意見書です。
1-8.過半数代表者の選任方法
従業員を代表する者は、その都度選任してもいいのですが、これでは手間や時間がかかってしまします。
労働関係の書類の中には、就業規則以外にもこの過半数代表者が必要な場面がいくつかあります。
それが、労使協定を締結する場合です。
労使協定とは、就業規則とは別に定める別規則のようなもので、この定めをしなければならないものが数多くあります。
代表的なものが、時間外・休日労働に関する労使協定 いわゆる36協定です。
36協定は、労使協定を締結するとともに管轄の労働基準監督署への届け出が必要になります。
しかも、有効期限が1年以内となっているため、少なくとも1年に1回の締結・届け出が必要になるのです。
そこで、毎年従業員の代表者を選任してその方に、就業規則や各種の労使協定の意見をもらうようにするとよいです。
過半数代表者の選任については、別に選任規定を作成して運用することをお勧めします。
就業規則のひな型を使用するのは注意が必要です。
ということで、今回は就業規則を作成する前に知っておきたい就業規則の知識についてご説明しました。
次回から、就業規則を作成するステップを全5回に分けてお伝えしてまいります。